研究室で3Dプリンターを3年ほど使ってきた経験から, 3Dプリンタを導入するか考えている人のための情報を書いていこうと思います.
- 3Dプリンタとは何か
3DプリンタはAdditive manufacturingを実現する装置の総称で, 非常に自由度の高い立体物を作成することができます. 製作方法は, 作成する立体のデータを薄くスライスし, スライスされた各層を1層ずつを作成し重ねていくといったものになります. この基本的な製作プロセスはどの出力方式でも変わりありません. - 何ができるのか
3Dプリンタで実現することは, 大雑把に言えばラピッドプロトタイピング(Rapid prototyping, 短時間での試作)ができることです. ラピッドプロトタイピングとは部品を短時間で試作することであり, 複雑な形状であるほど多軸切削加工機よりも短時間で作成することができます. 特に研究開発において, 少量のものが必要なときに威力を発揮します. - 導入すべきなのか
まず, 作成するものが板や棒を削って作れるようなものなら, レーザーカッタ・CNC・旋盤の導入を検討してください. 次に, 3Dプリンタで作成できる部品は基本的にプラスチック製です. 最近では, 強度が高めのマテリアルも販売されていますが, それでも所詮プラスチックで鋼の強度には勝てません. また, 部品は層を剥がそうとする方向には極端に弱くなります. つまり, 部品は引っ張りと剪断(積層方向は除く)にはマテリアル本来の強度は発揮できないと思ってください. 強度が必要な部品(Functional prototype)が必要な場合は, 荷重のかかる方向に注意してください. - どのプリンタを買うべきなのか
これについては, 使用者の用途によって向き不向きなので一概には言えないでしょう. しかし, 必ず必要となるのが高い出力の成功率と精度です. 3Dプリンタはみなさんが思っている以上に出力に失敗します(僕の場合, 10%を切ったこともあります). 10時間完成に必要な部品で, 8時間出力した後にノズルが詰まったりすると精神的なダメージも深刻になります. カタログには載らない数値で, 店員さんも知っているかどうか怪しいですが, ネットでレビューを見るなどして, 必ず確かめておくべき指標になります. 次に精度ですが, カタログに載っているのは基本的に出力の制度ではなくモータの位置精度だと思ってください. すなわち, カタログはあてになりません. 精度を確かめる方法としておすすめなのが, タミヤのユニバーサルプレートを出力することです. ここで確かめたいのは, 穴の直径の精度と位置の精度です. ひどいものになると, 穴の円が明らかに歪んでいるので注意してください. - お前は何を使ってるんだ?
うちの研究室では熱溶解積層法のプリンタとしてUltimaker 2 Extended+を使っています. PLAという3Dプリンタ向けのマテリアルでは体感95%ぐらいの成功率で出力できています. Ø3の穴もきれいに作れているので, 精度も十分にあります.
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